X線の粒子性 〜コンプトン効果〜

前回の講義で,X線(=電磁波)は波特有の性質をもっていることがわかりました。

しかし,電磁波であるはずの光が粒子の性質をもつのと同様に,X線もまた粒子の性質をもつことが知られています。

今回はX線の粒子性によって生じる現象をご覧に入れましょう。

 

 

物質によるX線の散乱

物質に当たって散乱したX線を調べると,散乱前のX線よりも波長が長くなる,という現象があり,これをコンプトン効果(またはコンプトン散乱)と呼びます。

これは普通の波ではありえない現象です!

(普通の波の反射では,波長はもちろん,振幅や速さも変化しない。固定端反射のときに位相が変化するぐらい)

 

この現象を見事に説明してみせたのがコンプトンという物理学者なのですが,彼はアインシュタインの光量子仮説にヒントを得て,この問題を解決しました。

「光(電磁波)は,粒子としての性質ももっている。 X線だって同じ電磁波なんだから当然粒子としても振る舞うはずだ!」と。

(以下,粒子としてのX線のことをX線光子と呼ぶことにします。)

 

コンプトンのアイデアを簡単に説明すると,

 

X線の物質による散乱は,X線光子と物質内の電子との衝突によって起こる。

 ↓

この衝突によって,X線光子がもっていたエネルギーの一部が電子に受け渡される。

 ↓

アインシュタインの光量子仮説によれば,光子のもつエネルギーは波長に反比例するので,エネルギーが減少すれば,逆に波長は長くなる。

 ↓

謎はすべて解けた!!

 

 

光子の運動量

…まぁ,もちろんこの説明だけでは解決したことにはなりません。

必要なのは,計算結果と実験結果が一致すること。

つまり,コンプトンの考えが正しいことを証明するには,X線光子と電子の衝突について計算しなければなりません。

衝突の計算をするときに必要になるのは,もちろん運動量。

光子がエネルギーをもつことは光電効果の回で説明したとおりですが,実はアインシュタインは光子のエネルギーだけでなく,運動量についても言及しています。

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これを使えば衝突の計算ができそう! というわけで,次の例題を解いてみましょう。

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答えはこのようになります ↓

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この3つの式を連立してvθを消去すれば,波長がどれだけ伸びるかを表す式が得られますが,その途中計算はただ長いだけで特に得るものがないので省略。 結果だけ示しておきます!

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(※ 可視光線でもコンプトン効果は起こるが,コンプトン波長の値が可視光線の波長に比べるて小さすぎるため,影響が無視できる。)

 

この計算結果は実験結果とよく合っており,この功績によってコンプトンはノーベル物理学賞を受賞しましたとさ。

めでたしめでたし。

 

今回のまとめノート

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次回予告

波だと思っていたものが,実は粒子の性質をもっているということが光電効果とコンプトン効果で示されました。

では逆に,「粒子だと思っていたものが波の性質をもっている」こともありえるのでしょうか?

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