原子

粒子性と波動性

ここまでの段階で,光とX線(ともに電磁波)が波として振る舞うのはもちろんのこと,粒子としても振る舞うことがわかりました。

それまで対極にあると思われていた粒子の性質と波の性質が同居している。 すでにこの時点ですごく不思議なのですが,驚くのはまだ早い!

ド・ブロイの提唱

電磁波の粒子性という摩訶不思議な話を,さらに推し進めたのがフランスの物理学者,ルイ・ド・ブロイ公爵。 ド・ブロイの考えはこうです。

「波だと思っていたものが実は粒子の性質ももっていた。 もしかしたら,我々が粒子だと思っているものも実は波の性質をもっているんじゃないか!?」

…すごい発想の転換!! このアイデアを推し進めたド・ブロイは,“粒子の波動性” について次のように言及しました。


…うーん,アイデアは面白いけど,これだけだと何だかこじつけっぽい印象を受けますね(^_^;)


電子の干渉

数学では,理論が矛盾なく構成されていればOKですが,物理ではいくら筋道が通っていても,実験で否定されれば意味がありません。

物質波の存在を証明するには,何か粒子を使って波特有の現象(回折や干渉など)が生じることを実験で確かめなければいけませんが,質量が大きいと波としての性質は見られないので,実験には質量が極めて小さい粒子を使う必要があります。

そこで目をつけたのが電子。 電子ならば質量の小ささは十分。

人々は電子=粒子だと考えているので,もし電子に波の性質が見られれば文句なしでしょう!

気になる実験方法は,「結晶に電子を当てる」こと。 上の計算によると,100Vで加速した電子の波長はだいたいX線と同じ程度なので,もしド・ブロイの言うとおり電子が波として振る舞うならば,X線と同じように散乱・干渉して,ラウエ斑点が得られるはずです!

この実験をしたところ,実際にラウエ斑点が観測され,ド・ブロイの考えは正しかったことが示されました!

波だと思われていたものが粒子の性質をもち,粒子だと思われていたものが波の性質をもつ。 つまり,

「世の中のすべてのものは,粒子の性質(粒子性)と波の性質(波動性)を両方もつ」

ということになります。 これ,この世界の見方を根底から覆すような大発見ですよね!!

さらっと書いてるけども!笑

粒子性と波動性に関するよくある誤解

「粒子は波の性質をもつ」という説明に対し,まちがった理解をしてしまっている人が少なからずいます。

これは全然ちがうので気をつけてください!! 粒子が波打って進んでいるのではなく,粒子とは本当に波そのものなのです。

もう少し詳しく,イメージを交えて説明しましょう。 さっき野球ボールのド・ブロイ波長を計算しましたが,波長が短い場合,波動性はほとんど現れません( “粒子性が強い” と表現する)。

イメージとしてはこんな感じ。

逆に,波長が長いものは粒子としての性質が現れにくい(“波動性が強い” と表現する)です。

たとえば,光(可視光線)とX線はともに電磁波ですが,可視光線の方が波長が長いので,「可視光線とX線では,可視光線のほうが波動性が強い」ということになります。

どちらかの性質が極端に強く,もう片方の性質が無視できるなら話は簡単ですが,先ほど見たように電子は波動性が無視できません。 粒子ならニュートンの運動方程式の守備範囲ですが,波の性質が無視できないとなると話はちがってきます。

当時の偉い人「粒子性と波動性が両立するミクロの世界では,これまで知られていた物理法則は通用しない。どうやらミクロの世界を記述する別の物理法則があるようだ…」

というわけでその後,ミクロの世界を支配する法則として “量子力学” と呼ばれる理論が誕生しますが,これは大学物理でやるレベルなのでこれ以上の深入りは避けましょう(名前ぐらいは覚えておいてください)。

今回のまとめノート


時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

【演習】粒子性と波動性粒子性と波動性に関する演習問題にチャレンジ!...

次回予告

次回はちょっと時代をさかのぼって,電子が発見された経緯を見てみましょう。

電子の発見ミクロの世界の話をするのに欠かせない存在,それが電子です。今回は時代をさかのぼり,電子が発見された経緯についての知識を深めましょう。...
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