静電気力による位置エネルギー

「保存力」というワードを覚えていますか?

前回学習した静電気力は,実は保存力の一種です!

保存力の性質でもっとも重要なのは,保存力ならば位置エネルギーを計算することができるという点です!!

www.yukimura-physics.com

↑の記事の中で予告した通り,静電気力による位置エネルギーが今回いよいよ登場します!

 

 

重力との比較

「位置エネルギーが存在する」なんてサラッと言っちゃいましたが,重力による位置エネルギーの場合と比較すると,位置エネルギーの存在が納得できると思います。

f:id:ph-km86-ma:20181106201255p:plain

(※ここでは,電場の大きさEは常に一定であると仮定しています。)

ね?

質量mの物体が重力に沿って落ちていくのと,電気量qの点電荷が電場に沿って「落ちて」いく様子は図にしてみるとそっくりです。

(※以前の講義ではF=qEqに絶対値をつけていましたが,今回は電荷の符号のちがいも含めて考えたいので,絶対値を外しています。)

現象がそっくりということは,その背後にある物理法則もそっくりのはず。

 

通常の物体が,位置エネルギーを運動エネルギーに変えながら落ちていくのなら,電荷だって位置エネルギーを運動エネルギーに変えながら「落ちて」いくはずです。

 

重力による運動と,静電気力による運動。

たしかに似ていますが,一箇所だけちがう点があります。

それは,物体は鉛直下向きにしか落ちないが,電荷は電場の向きや電気量の符号によって,受ける力の向きが変わるという点です。

つまり,場合によっては「上向きに落ちる」こともあるわけで(落ちるという表現が正しいかは置いといて),そこが重力との決定的な差です。

f:id:ph-km86-ma:20181106201335p:plain

2つのモノを比較するときは,似ている点と異なる点の両方をしっかり意識しましょう!

 

 

位置エネルギーを求めるには

静電気力にも位置エネルギーが存在するということがわかったので,次に問題になるのはその計算方法です。

 

重力による位置エネルギーの場合はmgh,つまり,質量m,重力加速度g,高さhを用いて計算しましたが,静電気の位置エネルギーもまずは同じように考えてみましょう。

f:id:ph-km86-ma:20181106202004p:plain

mghに対応している文字をそのまま当てはめただけですが,結論から言うとこの式は正しいです。

 

しかし!注意すべきはこの式の見方です。

重力による位置エネルギーの式mghは,m×g×hと見るのではなく,mg × hと見るのが正解です。

もともと「エネルギー=仕事」なので,重力mg × 距離hというわけです。

静電気力による位置エネルギーも同様に,静電気力qE × 距離dと考えられます。

 

…同じじゃねぇか!って? いえ,ここからが大事。

実は静電気力による位置エネルギーには,もう1つの解釈があります!

それは,q × Edという見方です。

重力で同じ見方をしようとすると,m × ghなってしまって,「ghって何??」って感じなのですが,電気の世界ではEdはとても重要な意味をもっていて,「電位」と呼ばれています。

 

電位は記号Vで表すことが多く,この記号を用いると,V = Edとなります。

 

よって,位置エネルギーの式をVを用いて書き換えると,U = qVとなります。

この式を見て分かるとおり,静電気力による位置エネルギーUは,電位が一定ならば電気量qに比例します!

また,q = 1Cを代入するとU = Vとなるため,「電位 = 電荷1Cあたりの位置エネルギー」と解釈できます。

 

静電気力による位置エネルギーは「力 × 距離」と「電位Vを求めて,それをq倍する」という2通りの解釈が可能ということになります。

 

静電気力のする仕事

エネルギーが求められるようになったので,仕事も計算することができるようになりました!!

f:id:ph-km86-ma:20181111103604p:plain

この仕事の式を少し変形させてみると…

f:id:ph-km86-ma:20190201113608p:plain

さっき「電位」という言葉が出てきたとき,「電位差」という言葉を思い浮かべた人が多いのではないでしょうか? 「電位差」とは電圧の別名でしたね!

 

物理基礎では「電圧とは,電気の世界における高さ」と表現しましたが,なぜ「電圧=高さ」なのか,ここでようやくその根拠が示されたことになります。

f:id:ph-km86-ma:20181106210857p:plain

このイメージはこれから先(特に回路の問題)も大事にしてほしいと思います。

 

なぜ「電位」という概念を持ち出すのか

話は少し戻りますが,力学ではghに何の意味もないのに,電気ではEdにわざわざ「電位」という名前までつけて意味づけしているのはなぜでしょう?

 

それは,「電位」が直接測定できる量だからです。

力学でもしghを求めようと思ったら,まず高さhを測定して,その後gをかけ算して求めることになります。

ところが電気の場合,たとえば電気回路なら,電圧計を用いればEdが分からなくても,電位Vを直接求めることができます。

 

つまり,仮に力学でghに何か名前をつけて記号を与えたとしても,位置エネルギーを求めようと思ったら,結局mghをそれぞれ求めなければいけません。

一方,電気では必ずしもqEdを求める必要はなく,qVでも求められる。

これが力学と電気の大きなちがいであり,わざわざEdに「電位」と名付けている理由でもあります。

 

今回のまとめノート

f:id:ph-km86-ma:20181106223337p:plain

ひとつ注意しておくと,弾性力による位置エネルギーは「弾性エネルギー」と略すこともあるのですが,静電気力による位置エネルギーを「静電エネルギー」と略すのはアウトです。

「静電エネルギー」という用語は,物理では別の意味で用いられます(いずれやります)。

 

次回予告

電位が分かれば位置エネルギーが求められるということなので,次回は電位の求め方を扱っていこうと思います。

お楽しみに!

www.yukimura-physics.com