気体の分子運動論③

前回得られた圧力の式から何か分かることはないか,考察してみたいと思います。

前回までの記事の続きとなりますので,未読の方はまずはそちらをどうぞ。

気体の分子運動論①気体とは多数の気体分子の運動によってできあがっているものです。そこで,気体の性質を分子の運動の観点から解き明かしてみましょう!...
気体の分子運動論②気体の分子が容器に壁に与える平均の力から,気体の圧力を求めてみましょう。...

では,本題に入ります。

手順8:理想気体の状態方程式と比較する

前回の最後に得られた圧力の式ですが,両辺にVをかけると「PV = …」の形になります。

PV = …」といえば,状態方程式が思い浮かびますよね!

そこで,2式を比較してみましょう。

PVNkTに置き換えただけのように見えますが(実際そのとおりだけど笑),物理としてはなかなか興味深い式です。

どこが興味深いのかというと,物理基礎の熱の一番最初を思い出してください。

「温度は物体を構成する原子や分子の熱運動の激しさで決まる」のでした。

原子や分子の動きが速いほうが温度が高い。

ところが,具体的にどれぐらいの速さだと何Kの温度になるのか,という話はこれまで出てきていませんでした。

さて,それでは得られた式をもう一度よく見てください。

式の中に速度(の2乗の平均)と温度が両方含まれています。

待ち望んだ原子や分子の速度と温度の関係式が,ここでようやく姿を表したのです!


手順9:式の中に運動エネルギーを登場させてみる

さて,速度と温度の関係式ということでしたが,分子の運動の激しさは「速度」ではなく「運動エネルギー」で表しておいたほうが自然じゃなかろうか?

いまやっているのは「熱(=エネルギー)」の分野だもんね!

そんなことを考えつつ,さっきの式を見てみると,vは2乗になっているし,その前には質量mもくっついているので,なるほど確かに運動エネルギーにしたほうが見通しが良さそう。

分母が3になっているのが惜しいですが,そこは無理やり式変形して2にしちゃいましょう!

気体分子の平均運動エネルギーと温度T[K]の関係式が得られました!

この式から,温度が決まれば,分子の平均運動エネルギーも決まってしまう(気体の種類に関係なく!)ことが分かります。

これにて分子運動の計算は終了。 行った計算を振り返ると,力積からはじまって,最後は運動エネルギーまで登場しました(^_^;)

分野に関係なく,物理にとって力学がいかに重要であるかが分かってもらえたらと思います。

長い道のりでしたが,圧力と速さの関係だったり,温度と運動エネルギーの関係だったり,面白い結果が得られたので良しとしましょう。

補足:単原子分子と二原子分子

上の計算結果について1つ補足。

手順8まではすべての理想気体に対して成り立つ計算なのですが,最後の手順9だけは,単原子分子からなる理想気体についてしか成り立ちません。

「単原子分子とは何ぞや??」という人のために,簡単に解説しておくと,

パッと見,単原子分子と二原子分子とで,気体のふるまいがそんなに変わるようには思えませんが,実際はけっこうちがいがあります。

2つのちがいは簡単にいうと,質点と剛体のちがいによく似ています。

手順9では並進の運動エネルギーしか考えていません。

単原子分子の気体ならそれで万事OKですが,二原子分子だと運動エネルギーに加えて,回転運動のエネルギーも温度に寄与するので,手順9の式は使えないのです。

気体の問題は大多数が単原子分子を扱っていますが,ときどき二原子分子の問題が混じっています。

「二原子分子の気体でも成り立つ式」と「単原子分子でしか成り立たない式」を区別し,問題を解く際は,条件をよく読むように心がけましょう。

今回のまとめノート

次回予告

運動エネルギーが登場したので,このまま気体の内部エネルギーの話に突入しちゃいましょう!

内部エネルギーと温度気体分子というミクロの世界を考察したら,分子の平均運動エネルギーが求められました。ではマクロな視点から見たときのエネルギーはどうなるでしょう?...