いよいよ運動の3法則もひとつを残すのみになりました。 第1法則も第3法則も,中学校で習っていることなので,高校物理における主役は,今回学ぶ第2法則といっていいでしょう!
運動の第2法則は別名「運動の法則」とも呼ばれますが,私の経験上,そのまま「第2法則」と呼ばれることも多いです。 今回は長めの記事&大事な内容なので,時間をとって読んでください。
まずはおさらい。 運動の第1法則(慣性の法則)は,物体にはたらく力がつりあっているときに成り立つ法則でした。 しかし,いつも力がつりあっているとは限りません。
力がつりあっていないとき,物体はどうなるのか? それを示してくれるのが運動の第2法則(運動の法則)になります。
運動の法則を読み解く
さっそくですが,運動の法則を紹介します!!
「物体に力がはたらくと,物体はその力の向きに加速度を生じる。加速度の大きさは力の大きさに比例し,物体の質量に反比例する。」
まず,前半に登場する「力」というのは,合力を表しています。 たとえば物体を右向きに5.0N,左向きに2.0Nで引っ張っていたら,合力は右向きに3.0Nとなるので,右向きに加速度を生じる,ということです。
この法則の重要な点はいくつかありますが,最大のポイントは加速度です!!
力がつりあっていないとき,物体はどうなるかを示すのが運動の第2法則である,と言いましたが,力がつりあっていなければ,物体は当然動き出します。 これは別に物理を勉強していなくても,誰でも知っていることです。
ところが!!
「力を加えれば止まっている物体は動き出す」ところまではいいんですが,多くの人がその続きを勘違いしています!
「加える力を大きくすれば物体は速く動くので,速さは力に比例する!」
これは大間違いです!
はまりやすい落とし穴
なぜ間違いなのか考えてみましょう。
もし,力の大きさと速さが比例するならば,力を2倍にしたら速さも2倍,力を3倍にしたら速さも3倍,… … …となるはずです。
同じ要領で考えれば,力を0にしたら速さも0,ということになりますが…
ここで,自転車を思い浮かべてください。 力強くペダルを踏めば,自転車はその分速く進むので,一見すると,比例関係は正しいように思えます。
しかし,ペダルを漕ぐのをやめた(=加える力が0)とき,速さは0になりますか?
なりませんよね!!
漕ぐのをやめた瞬間,ピタッと止まる自転車なんて存在しません!
漕ぐのをやめると,漕いでいたときと同じスピードで進むはずです(実際は摩擦や空気抵抗でだんだん遅くなりますが)。
さて,慣性の法則によると,「力がはたらかないとき,動いている物体は等速直線運動をする」のでした。 力と速さが比例すると考えると,慣性の法則と矛盾してしまいます。
ではどう考えたらいいのでしょうか。 実は答えは慣性の法則に隠されています!
慣性の法則は「力がはたらかないと,運動状態が変わらない」です。 これを言い換えると「力がはたらけば,運動状態が変わる」となります。
運動状態が変わるとは,止まっている物体は動き出し,動いている物体はその速さが速くなったり,遅くなったりする,ということです。
これってまさに加速度の話ですよね!!
ニュートンは,力が速さと関係しているのではなく,加速度と関係しているということを発見したのです!!
まとめると,「大きい力を加えれば物体は速く動くようになる」は正しいけれど,力が直接速さと比例するのではなく,「大きい力ほど大きい加速度を生じるので,その結果,物体は速くなる」というのが正しい解釈になります。
太っている人の自転車は止まりにくい
運動の法則を用いて,自転車の例を正しく説明してみましょう。
ペダルを漕ぐ→正の加速度を生じる→速くなる
漕ぐのをやめる→力がはたらかないので加速度なし→等速直線運動
ブレーキをかける→負の加速度を生じる→減速する
となりますね♪
それから後半の「加速度は質量に反比例する」の部分も大切です。
これは,質量が大きいと,同じ大きさの力でも生じる加速度が小さくなる,ということを言っています。 つまり,
質量が大きい→加速しにくく,減速しにくい
質量が小さい→加速しやすく,減速しやすい
ということ。
これを日常生活に当てはめると,たとえば自転車や車を運転するときなどは,荷物や同乗者が多いほど,減速しにくい(=止まるのに時間がかかる)ということになるので,安全運転のため頭に入れておいて損はないでしょう。
運動の法則を式で表してみる
運動の法則は,加速度と力の比例関係,加速度と質量の反比例関係を述べている法則なので,式に表すことができます!!
この式はそのままでは使いませんので,覚えなくて結構です。 比例と反比例だから式として書ける!という点だけ確認しておいてください。
1Nってどれぐらいの力?
ここでようやく,力の単位「N(ニュートン)」が定義できます。
「中学校では,100gの物体にはたらく力がおよそ1N,と習うが,それは “およそ” 1Nで,正確な1Nではない」という話をしたのを覚えているでしょうか??
覚えていない人は重力の記事へGO!

このときは「じゃあ1Nって何?」という話には敢えて触れませんでしたが,運動の第2法則を習ったいま,ようやく説明できます!!
ちょっとわかりにくい気もしますが(笑),これが正しい1Nの定義になります。
せっかく1Nも決まったことだし,今後も運動の法則の比例定数kは1としてしまいましょう!
長くなってしまったので,ここまでの内容をまとめて今回は終わりにします。
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

次回予告
この運動の法則はまだまだ奥が深いので,次回もこの続きです!
