ギターの弦を指で弾(はじ)くと音が鳴ります。
弦の張りを強くしたり弱くしたり,または弦を指で押さえたりして音程を変えられますが,そういう操作をしないで,ただ弦を1本弾くだけなら,プロのギタリストが弾いても,素人が弾いても同じ音が出ます。 弾く人の技量や,力の強弱に関係なく常に同じ音。
そう,前回やった固有振動が弦に生じているのです! 今回はこの弦に生じる固有振動について調べてみましょう。
弦の固有振動はどんな振動か
弦を弾くとき,普通は真ん中あたりを弾くと思います。 弾いたところが波源となって,振動が左右に伝わります。
ギターの弦は両端が固定されているので,端に到達した波は固定端反射をして逆向きに進みます。 結果,端に向かって進む波と,反射して戻ってきた波が重なって,弦には定常波が生じることになります!
弦の固有振動の正体はこの定常波に他なりません。 定常波を忘れている人は復習しましょうね!

この弦にできる定常波ですが,ひとつだけ制限があります。 それは,弦の両端が固定されていること。 固定されていたらその部分は振動できないので,弦の端は必ず定常波の節になります!
弦の定常波の種類
まとめると,弦に生じる固有振動の性質は,
・定常波であること
・両端が節であること
が挙げられます。 そして,これ以外にはありません。
この性質を満たす定常波が具体的にどういう形なのか調べてみましょう。 定常波は必ず腹と節が交互に等間隔で並ぶことに注意すると,こんな形が考えられます。
このように複数の振動が考えられる中で,一番シンプルな形の定常波を基本振動と呼びます。 今回の場合は,腹が1つだけの定常波が基本振動。
その他の定常波は基本振動の形を何個かくっつけたような形になっているので,基本振動が何個分かで区別します。
実際の弦楽器では,弦にこれらの振動が複数生じ,混ざりあって音を奏でています。
弦の定常波の考察
実際に弦にこれらの振動が生じているとき,どのような音に聞こえるか(固有振動数)を求めてみましょう!
弦の長さをL[m]として,まずは,基本振動と2倍,3倍振動の場合について考えてみます。
このようにして,弦の長さと波長の関係式が得られます。 さて,波長が分かれば,波の基本式を用いて振動数を求めることが可能です!!
これが基本振動,2倍振動,3倍振動の固有振動数。
2倍振動の振動数は基本振動の2倍,3倍振動の振動数は基本振動の3倍になっています。 4倍振動以降もそのようになっているのでしょうか?
4倍,5倍,…とやっていてもキリがないので,一気にひとまとめにしてやってしまいましょう!
1,2,3の場合をそのまま拡張していきます。
これが m 倍振動の固有振動数で,確かに基本振動のm倍であることがわかります。
この結果は丸暗記してはダメです! どうやってこの式を求めたか,その過程も含めて理解しておく必要があります。 自分で固有振動数の式が出せるようになるまで何回でも読み返してください。
固有振動数からみる弦楽器のしくみ
せっかく弦の固有振動数の式が得られたので,もう少し詳しく見てみましょう。
まず,v が分子に乗っているので,固有振動数が弦を伝わる波の速さに比例することが分かります。 v は弦の張力や,(1mあたりの)質量に関係しています。
音程を合わせるとき,弦の張りを強めたり弱めたりしますが,あれは張力で波の速さをコントロールしているのです。
また,弦の質量が大きいほど,ゆったりした振動となり,波の伝わる速さが遅くなります。 ギターに太い弦と細い弦があるのは,弦によって音階を変えるのに質量を変える必要があるからです。
次に弦の長さ。 Lが分母にあるので,固有振動数が弦の長さに反比例していることが分かります。 つまり弦が長いほうが振動数は小さく,音が低くなる。 そういえばベースはギターよりも弦が長いですよね!
逆に,弦を短くすれば音が高くなるのですが,弦楽器の演奏はこの性質を利用しています。
ただし,演奏中に弦を切って短くするわけにはいかないので,そのかわりに弦を指で押さえるわけです。 押さえたところが固定端となって,振動は押さえたところから先には伝わりません。 つまり,短い弦を弾いているのと同じこと!
楽器の原理が,固有振動数の式たった1つからわかるというのはすごいですよね!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

次回予告
今回は弦楽器だったので,次回は管楽器にスポットを当ててみましょう!
