理想気体と実在気体

物理基礎が終わって,物理の熱分野に入ります。

物理基礎で習った内容はしっかり理解できていますか?

そうでないなら,まずは復習!

www.yukimura-physics.comさて,この先の熱力学では,気体が主役となります。

気体を扱う場合,よく耳にするのが「理想気体」という言葉。

理想的な気体ってなんだ??って感じですが,いろいろ計算を始める前に,まずはこの理想気体について理解を深めていきましょう。

(注※ 理想気体の反意語は「実在気体」。)

 

 

理想気体と実在気体とのちがい

① 気体を構成する分子の大きさが無視できる

② 分子間にはたらく力が無視できる

この2つの条件を課した気体を理想気体と呼びます。

 

①の条件については,力学でもおなじみです。

たとえば打ち上げられたボールの運動について計算するときも,ボールの大きさは考慮しませんよね?

物理基礎の範囲の中ではその点についてあまりツッコみませんでしたが,力学では一部の範囲を除いて,物体を「点」として扱うのが普通です。

この先の話では,気体分子に対して,これまでに習ってきた力学の法則を用いて気体の振る舞いを調べていくので,気体分子も力学で扱う物体と同様,大きさを無視して考えたいわけです。

 

②の条件は,計算を簡単にするためです。

気体は無数の分子でできているので,分子間にはたらく力を考え出すと計算が大変になるし,そもそも分子間力の大きさの求め方はまだ習っていません。

…無視しちゃえ!!笑

 

計算するにあたって,面倒になりそうなものを排除したものが理想気体なのです。

これから先,気体の温度や圧力などの計算をしていくのですが,理想気体ならば比較的簡単に計算できることが知られています。

 

 

この条件は妥当か

ここで考えなければいけないのは,「本当に無視していいのか」ということです。

無視するのは簡単ですが,それで計算した結果が,現実の現象とかけ離れていたら意味がありません。

 

「空気抵抗を無視する」,「導線で生じるジュール熱を無視する」,…

物理は本質を見極める学問なので,本質に影響しないものは無視して構いません。

が,本当に影響しないのかどうかは慎重に考える必要があります。。。

 

話が逸れてしまいましたが,少なくとも高校物理に登場する実在気体は,理想気体として扱ってもだいたいOK!!

高校物理ではあまり極端な状態(すごく温度が低いなど)の気体を扱うことはありません。

そういう「普通の」気体においては,

◯気体の体積(気体分子が動き回る範囲)に対して,気体分子が占める割合は非常に小さい。 → ①の条件は妥当。

◯気体分子は熱運動をしているので,分子間力を振り切って飛び回っている。 → ②の条件は妥当。

 

これらの理由によって,高校物理ではほとんどの気体を,理想気体として扱うことが可能です。

 

理想気体の限界

上の説明,なにか引っかかりますよね?

ほとんどの気体を,理想気体として扱える」ということは,理想気体とみなせないものも例外的に存在するということです。

それはどんなときかというと,気体が「(極端な)低温・高圧」のときです。

 

まず,一定の温度を保ったまま高圧にしていくと,気体の体積が減少するので,気体の体積のうち,気体分子の占める割合が増加していきます(=①の条件が成り立たなくなる)。

また,低温にしていくと,分子の熱運動が鈍くなるので,次第に分子間力の影響が出始めます。(=②の条件が成り立たなくなる)。

 

理想気体は計算するには非常に便利なのですが,上記の理由で,低温,高圧の気体を扱うことはできません。

逆に言えば,高温,低圧の気体なるほど,理想気体に近づきます。

じゃあ高温って何Kから? 低圧って何Paから? 気になりますよね?

これはハッキリと決まっているものではありませんが,常温(300K)なら十分高温です。

また,常圧(1気圧)なら十分低圧です。

繰り返しになりますが,高校物理では常温常圧から極端に外れた気体を扱うことはないので,理想気体とみなして差し支えありません。

 

ついでに,理想気体の欠点についても話しておきましょう。

普通,気体は冷却していくと,液体に変化します。

冷やすことで気体分子の熱運動が弱まり,それまで好き勝手動いていた分子が,分子間力につかまって気体ほど自由に動けなくなる。

それが,気体→液体の変化(凝縮)です。

ところが,理想気体では分子間力を完全に無視してしまっているので,いくら冷やしても液体に変化しません!

それどころか絶対零度まで冷やすと体積が0になってしまうという始末。

状態変化を記述できない。これが理想気体最大の欠点です。

 

今回のまとめノート

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次回予告

と,まぁ欠点も書きましたが,高温・低圧状態においては気体を理想気体とみなすことによって,いろいろな性質を簡単な計算で導くことができるので,そういう場面では非常に便利な概念です。

このサイトは基礎的な内容を重視しているので,以後,理想気体のみを扱っていきます。

次回からは気体の問題の取り扱い方について学んでいきましょう!

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