電磁気

電磁誘導とレンツの法則

ここから先の講義では,「磁場が電流をつくり出す」現象に焦点を当てていきたいと思います。 以前,電流がつくる磁場について学んだので,その逆の現象ということになります。

高校物理の電磁気分野の中では最大の山場なので,気を引き締めていきましょう!!

コイルと磁石で生じる電流

磁場からどうやって電流をつくるのか。 やり方は簡単。 用意する材料はコイルと棒磁石と検流計。

(※ 検流計…電流が流れたかどうかを調べる機器。微小な電流でも針が振れる。)

まず検流計とコイルを接続します。 そして,棒磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりすると,なんとそれだけでコイルに電流が流れるのです!

さて,電流を流すには電圧(起電力)が必要になります。 通常の電気回路は電池をつなぐことで電圧を得ているわけですが,今回は電池を一切使っていません。

にも関わらず,実際に電流は流れるので,「磁石を動かすという行為が電池の代わりをした(=電圧を生み出した)」という結論が得られます。 このように,磁場によって電圧が生じる現象のことを電磁誘導と呼びます。

ついでにもう少し用語を紹介しておきましょう。

誘導起電力 … 電磁誘導によって生じた電圧のこと。

誘導電流 … 誘導起電力によって流れる電流のこと。

(※ 起電力という用語ですが,いまのところは「電圧とだいたい同じ意味」ぐらいに思ってもらって大丈夫です。 詳しく知りたい人はこちらの記事を読んでください。)


磁石の動きと誘導起電力の向き

先ほどの実験に話を戻しましょう。 コイルに電流が流れるかどうかだけを調べるなら,検流計ではなく豆電球を用いた方が簡単。

なのになぜわざわざ検流計を使ったかというと,電流の向きに注目してほしいからです。 さっきの実験をもう一度見直してみると,

この実験からわかることは,

① 磁石を近づけたときと遠ざけるときでは,誘導電流の向きが逆(=生じる誘導起電力の向きが逆)。

② 磁石をコイルに近づけたまま静止させると,電流は流れない(=誘導起電力は発生しない)。

ということです。 もうひとつ付け加えると,

③ 磁石のS極側で同じ実験をすると,棒磁石を動かす向きと誘導電流の向きの関係はN極のときと逆になる。

この実験結果を受けて,当然次のような疑問が浮かびます。

「磁石の極・動かす向き・誘導起電力の向きにはどのような規則性があるの??」

コイルは “あまのじゃく”

誘導起電力の向きに関する法則は「レンツの法則」と呼ばれています。

レンツの法則:誘導起電力は,それによって流れる誘導電流のつくる磁場が,外部の磁場の変化を打ち消そうとする向きに生じる。

ぼく「うんうん」

読者のみんな「は??????」

何も知らない人がこのレンツの法則を読んでも,何が言いたいのかわかりづらいと思うんですよね(^_^;)

そこで,私はよく「コイルはあまのじゃく」と説明しています。 あまのじゃくとは,「他人の意見にわざと逆らうひねくれもの」という意味で使われますが,コイルはまさにそういう性質をもっています!

コイルの性質を理解するためのポイントは「コイルの中の磁場」です。

最初,コイルの中に磁場は存在しませんが,コイルに磁石を近づけると,磁石の磁場(磁束線)がコイルの中に入り込みます!

コイルは内部の磁場の変化に対して,あまのじゃくぶりを発揮します。 つまり,磁石の磁場を受け入れようとせず,これを打ち消そうとするのです!

しかしどうやって打ち消すのでしょうか? ここで思い出してほしいのは,電流がつくる磁場の話です。

電流がつくる磁場電気と磁気が似た性質をもっているので,「この2つは互いに関係しているんじゃないか…?」と考えるのは自然なことで,実際,密接に関連しあっています。...

コイルに電流が流れれば,内部に磁場をつくることができます。 コイルはこの性質を利用して自分自身に電流を流し,磁石の磁場に対抗しようとするのです。 これが誘導電流の正体!

もちろんコイルには電流だけでなく,電流を流すための電圧(誘導起電力)も生じています。

磁石のN極を近づけたときに生じる誘導起電力の向きと誘導電流の向きはこうして決まるのです。



次に磁石をコイルから遠ざけるときを考えてみましょう。 すると今度はコイル内部の磁束線が減少し,磁場が弱まります。

ここで再びあまのじゃくタイム!!

コイル「磁束線が減っていく…さびしい… そうだ自分でつくろう!」

さっき(磁石を近づけたとき)は「コイルの中に磁束線が入り込むのは許せん!打ち消してやる!」っていう反応してたくせに,いざ磁束線が減ると今度は増やそうとする… めっちゃあまのじゃくじゃないですか!?

あまのじゃくというか,ツンデレというか…笑

まぁとにかく磁石を遠ざけると,コイルは磁束線が減るのを防ごうとして自ら磁場をつくり出します。 先ほどと同様,誘導起電力によって自分自身に電流を流し,磁場を生み出すのです。

磁石のS極側を近づけたり遠ざけたりするときも同様に考えることができます。 磁場の向きに注意してくださいね!


レンツの法則は文章で書かれてもいまいち分かりにくいのですが,このように,「コイルはあまのじゃくな性格」と覚えておけば間違えません!!

電磁誘導の注意点

上で説明したように,コイルは内部の磁場の変化を敏感に察知して,磁場の変化を妨げる方向に誘導電流を流します。

ここで,覚えておきたい重要なポイントがひとつ。 コイルは磁場の変化を妨げようとしますが,完全に妨げることはできません!!

要するに電磁誘導とは,コイルによる無駄な抵抗(笑)

コイルは,内部の磁場が変化した瞬間は反抗する(=電磁誘導が起こる)けど,次第に変化を受け入れます。 ゆえに,磁石をコイルに近づけっぱなしでは電磁誘導は起こらないのです。

長くなったので,今回はここまで!

今回のまとめノート

次回予告

誘導起電力の向きはわかったので,次回は誘導起電力の大きさについて学習しましょう!

ファラデーの電磁誘導の法則電磁誘導によって生じる誘導起電力の大きさに関する具体的な計算方法を伝授したいと思います。 ...