半導体

導体と不導体の中間の抵抗率,つまり「電気を特別通しやすいわけでもないけれど,まったく通さないわけでもない」という中途半端な性質をもつ物質を半導体といいます。

そんな中途半端な性質にも関わらず,半導体は今日のテクノロジーを支える大事な役割を担っています。

今回は半導体の種類について学んでいきましょう。

(注意:今回の記事には,価電子や電子式などの簡単な化学の知識が登場します。)

 

 

真性半導体と不純物半導体

「どんな物質が導体か?」と言われたら,鉄や銅などの金属類が頭に思い浮かびますが,「どんな物質が半導体か?」と言われたら,即答できますか?

 

…おそらくほとんどの人が答えられないと思います。

単体の元素で半導体の性質を示すものは少ないので知らないのも無理はないですが,Si(ケイ素)やGe(ゲルマニウム)などが半導体として知られています。

SiやGeは単独でも半導体として機能しますが(真性半導体),あまり実用には向かず,実際には微量の不純物を混ぜたもの(不純物半導体)がよく用いられます。

「不純物を混ぜる」と聞くと,あまりいいイメージが湧きませんが,半導体ではこの不純物こそが重要な役割を果たすのです!

大雑把に言えば,不純物を混ぜることで電気が通りやすくなります(もちろん導体には及ばない)。

そのメカニズムを見ていきましょう。

 

 

① n型半導体

混ぜる不純物は何でもいいわけではなく,用途によってある程度決まっています。

SiやGeは14族の元素ですが,それに15族元素(PやAsなど)を不純物として混ぜたものをn型半導体といいます。

 

さて,化学基礎で学習したとおり,14族の元素は4個の価電子をもち,共有結合によって結晶をつくっています。

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さて,ここに微量の15族元素が混じるとどうなるでしょう?

15族元素は5個の価電子を有するので,14族と同じように共有結合をつくろうとすると,電子が1つ余ってしまいます!

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余った電子は行き場がないので,結晶中をウロウロすることになります。

この状況,金属の自由電子に似ていると思いませんか?

金属の場合,金属結合で余った自由電子が移動することで電流が生まれます。

同様に,n型半導体も “余った電子” の流れが電流となります。

(※ ただし,金属内の自由電子とちがって,n型半導体内の余った電子は微量であることに注意。)

 

半導体内で電気を運ぶ役割をするものをキャリアといいます。

この言葉を使えば,上で説明したことは「n型半導体のキャリアは電子である」と一言でまとめられます!

 

② p型半導体

よく用いられる不純物半導体は,n型の他にもうひとつあります。

BやAlといった13族元素を不純物として添加したもので,こちらはp型半導体と呼ばれています。

 

13族の元素は価電子を3つしかもっていないので,14族元素の結晶に混じると,結合するための価電子が1つ足りない状況に陥ります。

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電子が足りない部分は,ホール(または正孔)と呼ばれています(ぽっかり穴が空いているように見えるため)。

ホールは本来あるべき電子(負電荷)がなくなっている状態なので,正の電気をもっていると考えることができます。

わかりにくい人もいると思うので,図で説明しておきますね!

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では話を戻しましょう。

13族元素が混じり,ホールがある状態の半導体に電場を与えると,近くの電子がホールを埋めようと移動してきます。

これでホールが無事埋まれば一件落着かに思えますが,よーく考えてください。

ホールを埋めようとして電子が移動したら,今度はその電子があったところが新しくホールになってしまいます!

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電子が移動してホールを埋めても,別のところに新しいホールが生まれるだけ。

これは見方を変えると,「電子ではなく,ホールの方が移動している」と考えることができます!

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さて,「電子が移動している」と現実的に見るか,それとも「ホールが移動している」と考えるか。どちらがよいでしょうか?

もう一度上の図を見てください。

図の左側には電子が移動している様子が描かれていますが,移動しているのは毎回別の電子です。

一方,図の右側の方は1つのホールが移動しているだけです。

このことから,「ホールが動いている」と考えるほうがシンプルだとわかります。

p型半導体を扱う場合は電子ではなく,ホールの動きに注目しましょう!

 

まとめると,p型半導体内に生じるホールは正の電荷をもっており,電場をかけるとホールが半導体内を移動します。

これは,ホールの移動と同じ方向に電流が流れていることに他なりません!

つまり,「p型半導体のキャリアはホールである」と結論づけられます。

 

 

名前の由来

どっちがn型でどっちがp型か,ごちゃまぜになって覚えられない!という人のために少々英語のお勉強。

n型半導体の「n」は,negativeの頭文字で,p型半導体の「p」は,positiveの頭文字です。

「ネガティブ」「ポジティブ」というと,悲観的・楽観的のような性格面を表す印象が強いですが,科学の分野では負(陰性)・正(陽性)を表す意味合いで使われており,半導体もその例に漏れません。

不純物半導体のn型・p型という名称は,キャリアの電気的性質によってつけられています。

電子(=電荷)がキャリアとして機能するものは,negativeな半導体ということで,n型,ホール(=電荷)がキャリアとして機能するものは,positiveな半導体ということで,p型と名付けられています。

これさえ覚えておけば,どっちがどっちかわからなくなる!ということはないはず。

 

余談になりますが,陽イオンは英語でpositive ion,陰イオンは英語でnegative ionです。

繰り返しますが,陰イオンはminus ionではなく,negative ion。

「マイナスイオン」とかいうニセ科学に注意しましょうね!

 

今回のまとめノート

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しれっと書きましたが,半導体には「周囲の影響で導電性が変化する」という重要な性質があります。

記事の中で触れなかったのは,その変化のメカニズムが高校物理の範囲外だからです。

とりあえずそういう性質もある,ということだけ知っておいて,興味がある人は各自で調べてみてください。

 

次回予告

LED(発光ダイオード)など,いまや生活に欠かせない電子部品となっているダイオードは,半導体を使って作ることができます。

そのダイオードの性質について,次回詳しく学習していきましょう。

www.yukimura-physics.com