前回は,加速度運動する系の中の観測者と外から見ている観測者では,現象の解釈が異なることを学習しました。
とりわけ,中にいる観測者にしかわからない見かけの力 ー 慣性力 ー の存在が重要だったわけですが,今回は “もう1つの慣性力” を紹介したいと思います。
もう1つの慣性力 ー 遠心力 ー
観測者が加速度運動しているとき,その観測者は慣性力を認識しますが,加速度を生じる運動は何も直線運動だけではありません。
いま絶賛勉強中の円運動だって加速度を生じる運動です!!
つまり,前回の話を鵜呑みにすれば,急加速(or 急停止)するバスの中と同様,円運動する物体の中の観測者は “見かけの力” を感じることになります。
円運動の中にいると感じる見かけの力…
そう! ズバリ,遠心力です!!
外の人にはわからない力であること,向きが加速度と逆向きであることを考えると,遠心力とは慣性力の円運動ver.であることが明らかです!
慣性力という名前よりも遠心力のほうが有名な気がしますが(笑)。
遠心力の大きさも慣性力同様,ma(遠心力を受ける物体の質量 × 円運動の加速度)で求められますが,円運動の加速度は半径と速さ(or 角速度)を使って表せることに注意しましょう!
速さを用いて表す場合は半径に反比例しますが,角速度を用いる場合は半径に比例することが式からわかります。
2つの視点の比較
遠心力は慣性力の一種なので,力の向きにしろ大きさにしろ,前回の記事で書いたこと以上の新情報は特にありません。
が,このまま終わるのもアレなので,前回と同様,1つの現象を2つの視点から見比べてみることにしましょう。
今回は問題形式でいきます!
観測者の立場によって運動の見方が異なるので,立てるべき式もちがってくることに注意!
まずは自分で考えて計算してみて,できたらこの下にある解答で確認してください。
では,解答です。
(1)を解くのに,間違えて遠心力を使ってしまった人はいませんか?
円運動を外から見ている立場では,遠心力は存在しないので図に書き込んではいけませんよ!
では,続けて(2)の解答もどうぞ。
(1)は運動方程式,(2)は力のつりあいの式なので,式の “意味” はちがうけど,式の “形” は同じです。
「結果が同じならどちらかだけできればいいじゃん?」という人がいますが,それは大間違い。
問題によってはどちらの視点を使うか指定されることもあるので,両方の視点を使いこなせるようにしておくことが何より重要です!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

余談
今回の記事を通じて,遠心力について正しい知識が得られたと思いますが,遠心力は世の中ではかなり誤解されているのが事実。
私が気になるものを2点紹介したいと思います。
① バケツの水が落ちない理由
バケツに水を入れて手に持ち,ぐるぐる回してもバケツの水はこぼれ落ちません。
この理由を「水に遠心力がはたらくから」という人がいますが,これはおかしいですよね??
だって,遠心力は水と一緒に円運動している立場の人にしか観測できないはずじゃありませんか!
では,外から見ている人は何と答えるのが正解なのでしょうか?
答えは,「水は円運動しているから落ちない」です。
円運動をしている限り,水は円周上しか動けないので落ちてくるはずがありません。
これは月が地球に落ちてこない理由と同じですね。
月の話だと遠心力使わないのに,なんでバケツになるとみんな遠心力使いたがるんだろう?
② 「遠心力を使って打つ」
野球のバッティングやテニスなどで,「遠心力を利用しろ」というアドバイスをときどき見かけますが,これもおかしいですよね?
何がおかしいかは,打球の向きと遠心力の向きを考えればわかるはずです。
ほら!
打球方向と遠心力は直角なんだから,打球の威力を上げるのに遠心力は利用できません!!
理科の用語を使われるとそれっぽく聞こえますが,よくよく考えると意味不明ってことはよくあります。
だまされないようにしっかり勉強しないといけませんね…(^_^;)
次回予告
円運動の話題はこれにて終了…なのですが,円運動を基礎にして,また新しい運動に突入していきます!
