静止摩擦力と最大摩擦力

摩擦力と聞いて,みなさんはどんなイメージをもつでしょうか?

「動くのを邪魔する力」という声が聞こえて来そうです笑

しかも中学校の理科では,「摩擦は無視する」問題ばかりなので,摩擦はいらない子,みたいなイメージもあるかもしれません。

 

とんでもない!!

 

まず,「摩擦=邪魔する力」というのは必ずしも正しくありません。

例えば自動車は,地面とタイヤとの摩擦によって動いています。

(もし地面がツルツルの摩擦0だったら,タイヤは空転するだけです)

この場合,摩擦は邪魔するどころか,推進力になっているのです。

この例からもわかる通り,摩擦力は物理をやる上で必要不可欠であり,簡単に無視していいものではありません。

そんなに重要なのに,なぜ小中学校で摩擦をやらないのかというと,「案外複雑だから」です。

 

一口に「摩擦力」と言っても,実は摩擦にはいろんな種類があります。

高校物理ではその中の2種類,「静止摩擦力」と「動摩擦力」をやります。

今回は,静止摩擦力について学習していきましょう!!

 

 

物体が静止しているときの摩擦力について 

まずはイメージ。 

あなたの目の前に,がんばって押せばなんとか動かせるぐらいの質量をもつ物体があります。

その物体を初めは弱い力で押し,徐々に力を大きくします。

 

… … …イメージできましたか?

物体はそこそこ質量が大きいという設定だったので,はじめ弱い力で押しているうちは物体は動き出しません。

静止したままです。

「力を加えているのに静止したまま」というのはどういうことでしょうか。

 

そう,摩擦力が動き出すのを妨げているということです!

このように,物体が動き出さないようにする力を「静止摩擦力」と言います。

静止摩擦力の大きさはどうなるでしょう?

押して力を加えているのに物体が動き出さないということは,静止摩擦力の大きさは加えている力と同じ大きさで,向きは逆ということです。

(静止摩擦力は加えた力とつりあっている,と表現します。)

静止摩擦力が押す力を打ち消してしまっているわけですね♪

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具体的な数字で例を挙げておきましょう。

10Nの力で押して動かなかったら,静止摩擦力も10Nです。

90Nの力で押して動かなかったら,静止摩擦力も90Nです。

200Nの力で押して動かなかったら,静止摩擦力も200Nです。

「力がつりあっている」とはこういうことです。

 

さらにもう1点。 この例からわかるように,静止摩擦力の大きさは一定ではありません。

押す力の大きさに合わせて変化するのです。

 

 

静止摩擦力の限界

最初のイメージに戻りましょう。

物体を押す力を大きくしていきます。

はじめのうちは物体は動かないので,押す力を大きくするのに合わせて,静止摩擦力もどんどん大きくなります。

 

あなたが1Nで押しているときは,静止摩擦力は1N,

あなたが30Nで押しているときは,静止摩擦力は30N,

あなたが150Nで押しているときは,静止摩擦力は150N,

… … …

こんな感じで静止摩擦力はどんどん大きくなっていきますが,永遠にこの調子で大きくなり続けるのでしょうか?

 

答えはもちろんNO!!

どんな重い物体でも,十分に大きな力を加えてやれば必ず動き出すはずです。

今回は「がんばって押せばなんとか動かせる」程度の物体を考えているので,加える力を大きくし続ければ,そのうち動き出します。

物体が動き出す瞬間,何が起こっているのでしょう?

  

答えは簡単。 

「加える力が摩擦力を超えた。」 

ただこれだけです。

このことは,静止摩擦力の大きさには限界がある,ということを示しています。

この静止摩擦力の限界を「最大摩擦力」と呼んでいます。

 

最大摩擦力は,物体が動くか動かないかを判断するのに役立ちます。

上の話から,

・加えた力≦最大摩擦力 … 物体は動かない(静止摩擦力=加えた力)

・加えた力>最大摩擦力 … 物体は動き出す

ということが分かります。

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さて,静止摩擦力が一定の大きさではありませんでしたが,最大摩擦力は計算で求めることが出来ます。

その計算式と,ここまでの話をまとめておきましょう!

 

今回のまとめノート

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比例定数 μ の名前に注目。

静止摩擦係数」となっていますが,静止摩擦力を計算する式ではなく,最大摩擦力を計算する式なので要注意。

(そもそも静止摩擦力は加えた力からしか求められない)

 

次回予告 

次回はまた別の摩擦力を解説します!

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